平地とは異なる多摩川の顔
2024年05月31日
青梅街道に沿って多摩川を遡ると、各所に水源関連施設を見ることができる。
例えば、江戸時代から昭和にかけて東京の水道水の供給を担った玉川上水のスタートにある羽村取水堰や、その上流にあって山口貯水池へ原水を導水するための小作取水堰。青梅を超えて都民のハイキングコースと知られる御岳渓谷は、その渓流が環境省の選定した名水百選の一つになっている。奥多摩湖は水道専用貯水池としては日本最大級を誇る。小河内ダムに隣接する「水と緑のふれあい館」では、湖底に沈んだ旧小河内村各集落の郷土の歴史や東京都の水道事業について学ぶことができる。
さらに上流に分け入ることをお薦めしたい。青梅街道を進み山梨県に入ると、街道の通称は「大菩薩ライン」となる。山間に広がる丹波山村の全面積の75%が水源林として保全が行われている。この丹波山村を超えると、目立った村落はない。迫り来る山の間をうねるように走る大菩薩ラインは、片方が急峻な山肌となり、片方の眼下に急流が走る。急流の名前は、この地域では一之瀬川だ。夕方になると陽は山に遮られて、深山幽谷の度合いを一層増す。その道の途中に「尾崎行雄水源踏査記念碑」が立ち、歴史を刻んでいる。
春には青葉が芽吹き、秋には紅葉で彩られるので、シーズンにはドライブコースとしても知られているが、平地を流れる多摩川とは別の顔を見る事ができる意味でも楽しめるはずだ。
帰りは、そのまま塩山方面に進んでほしい。甲府盆地に下りれば中央高速道路まではそれほど遠くない。